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教授挨拶

神経内科学講座ホームページへようこそ

足立教授 平成26年 4 月 1日より神経内科学講座教授として赴任致しました足立です。
 産業医科大学神経内科学講座は1978年(昭和53年)に産業医科大学の発足と同時に開設され、村井由之初代教授のご努力で当時としてはまだ殆ど見られなかった神経内科学という名称での発足となりました。この頃はナンバー内科が普通でありましたので、これは画期的なことと思われます。このような伝統を大切にし、種々の神経疾患や心療内科疾患のメカニズムの解明や治療法の開発といった神経科学の先端的な課題を担う講座として発展させていきたいと考えております。この神経内科学講座のホームページを通して、神経内科学講座の活動や情報伝達、交友そして同窓の先生方の現況を、医局員をはじめ同窓の先生方、さらには関係者に広く発信し、内外に有用とされるホームページに発展させていきたいと考えております。これからも引き続き関係各位のご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

 神経系は、頭のてっぺんから足の先まで張り巡らされている、人間にとって欠くことのできない器官系です。脳神経内科は、そのような脳〜脊髄〜末梢神経〜筋に渡る神経系に起こる器質的な異常事態(疾患)を診療する科です。脳神経内科を受診される患者さんは、頭痛、めまい、しびれ、感覚が鈍い、筋力低下、歩けない、話しにくい、飲み込みにくい、見にくい、意識が悪い、痙攣発作、物忘れなど多岐にわたります。神経内科の大きな特徴は、病歴と神経診察という医師自身で行う技能が、検査技術が発達した今日でも最も威力を発揮する分野です。この神経診察のみで診断できる疾患もありますが、神経診察にCT、MRIなどの画像、電気生理学的検査などを組み合わせて最終診断を行います。この病歴と神経診察による評価が正しくできる神経専門医を育てることを最も重要な使命と考えています。産業医科大学病院脳神経内科は神経疾患すべてを診療対象としており、地域の基幹病院であるため、ほぼ全ての種類の神経疾患の患者さんが受診され、研修を行うには最適な病院と考えられます。地元の北九州市内あるいはその近郊の地域では脳神経内科医が要望されている状況があり、そのような地域の医療を担う脳神経内科・心療内科医を育てていきたいと考えております。また、産業医科大学は産業医を育成するという任務を負っている大学でもあり、産業医も輩出していきたいと考えております。
 病院の診療では、認知症、脳血管障害、てんかん、ストレス性疾患などの脳神経内科・心療内科関連の対象疾患が近年増加しており、最近の15年でほぼ倍増している疾患もございます。このような疾患を十分に診療していくためには、大学病院、開業医の先生、地域の中核病院、介護を担う地域包括支援センター、リハビリ施設、長期療養型施設などとの連携を図っていくことが極めて重要です。2018年4月には認知症を診療する認知症センターが開設されました。また、脳神経外科、精神科などの神経系に関連した他科との連携も極めて重要です。これらの症候の患者さんについて、必要であれば是非ご紹介下さい。特定機能病院としての高度外来・入院機能を維持するために、診療方針の決まった患者さんにつきましては積極的に地域に逆紹介致します。

 教育に関しましては、多岐に亘る神経疾患、筋疾患などを効率よく大きな漏れなく学生に教えていくことが重要です。学生からは、多くの疾患を一つずつしっかり教えて欲しいなどの要望があり、その対応に熟慮を重ねております。学生の頃より実践的な教育を行っていくことが医師の養成に不可欠です。近年の医師国家試験の問題の傾向は、この実践的な実力を問う問題が増えております。また、研修医への神経内科疾患のプライマリーケアの教育や若手神経内科医の専門医教育の過程も、豊富な症例に支えられて整備されてきております。種々の神経内科疾患を彼らが経験できる環境を整えていくことが極めて重要です。若手医師が個々のポテンシャルを見いだして伸ばし、高度で堅実な地域医療を実践する医師・産業医、臨床研究を行う医師、リサーチマインドを持った医師を育て、研究志向あるいは地域に密着するなど多様な可能性を描けるような医師を育てていきたいと考えております。

 研究に関しましては、産業医科大学神経内科学講座がこれまで取り組んできているてんかんや神経免疫疾患の解析研究、ストレス性疾患研究に加えて、私の専門領域であります神経変性疾患の病態を解明する研究、あるいは神経病理の研究などを今後発展させていきたいと考えております。大学にとって研究は非常に重要な活動であり、大学の使命である情報発信の基幹となる活動です。今後は各研究を発展させて、基礎研究の知見が臨床治験へとつながっていくようなトランスレーショナルリサーチができればと考えております。

 引き続き、認知症、神経難病、脳卒中、てんかん、ストレス性疾患、その他の神経疾患に対して、地域連携・ネットワーク型の教育・診療・研究のシステムを発展させていきたいと考えております。脳卒中については、2021年4月に設置された脳卒中血管内科学講座の先生達と連携して脳卒中の診療システムを作り上げております。認知症や神経難病に関しては、地域連携システムの構築が既に始まっております。それらの結果として、大学・周辺の病院における産業医活動・医療の活性化、リサーチマインドを持った脳神経内科・心療内科医の育成、さらに神経疾患の新規治療法の開発につながっていけばよいと考えております。

 それでは、今後も引き続き、ご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

神経内科学講座教授
足立 弘明