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多発性硬化症の臨床研究

多発性硬化症と視神経脊髄炎における誘発電位検査の有用性

 多発性硬化症は中枢神経系の炎症性脱髄性疾患です。寛解再発の経過が特徴ですが、初期には種々の鑑別する疾患が存在します。病態として免疫学的には抗原提示細胞により活性化されたT細胞が脳血液関門(Blood Brain Barrier BBB)を通過して直接髄鞘を攻撃すると考えられています。このようなメカニズムでおこる病変は、頭部MRIでは一見正常な部位に認められることが最近のPET検査でわかっています。また多発性硬化症においての誘発電位検査は有用な検査と考えられています。視覚誘発電位は診断基準にも挙げられており、複数の誘発電位検査の結果によって予後が推測できるとの報告もあります。神経学的所見では明らかでない異常所見が誘発電位検査でみられることもあり早期診断にも役立つといわれています。このようなsubclinicalな検査異常は多発性硬化症の病態にも関係している可能性が示唆されます。

多発性硬化症と視神経脊髄炎における誘発電位検査の有用性

 一方、多発性硬化症の鑑別疾患の一つとして視神経脊髄炎が挙げられます。視神経脊髄炎ではアクアポリン4(AQP4)抗体や補体によるアストロサイトの障害が主体であり、免疫学的にも多発性硬化症と別の病態と考えられています。誘発電位検査においては、臨床症状が明らかでない時に異常所見はほとんどみられず、多発性硬化症と異なる所見を呈しています。今後個々の症例において臨床症状、画像所見、誘発電位検査を調べることにより多発性硬化症や視神経脊髄炎の特徴を明らかにしたいと考えています。