分子グループ
この研究グループは、ポリグルタミン病や多系統萎縮症などの脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病などの神経変性疾患の病態解明と治療法の開発に取り組んでいます。神経変性疾患では病的な蛋白質が、神経細胞内や間質などに異常に蓄積して病態が形成されると考えられています。神経変性疾患では変異蛋白質からなる核内あるいは細胞質内封入体と変異蛋白質のびまん性細胞内蓄積が特徴的な病理所見で、異常蛋白質が生体の防御機構を凌駕して神経組織内で不溶性の凝集体を形成したり、あるいは蓄積する過程で細胞毒性をもたらし、神経細胞が変性し細胞死に至ると考えられています。細胞内の異常蛋白質の処理には、ユビキチンプロテアソーム系やオートファジーが関与するとされています。私たちは、分子生物学的技術、免疫組織化学、電子顕微鏡、マイクロアレイなどの手法を単独、あるいは組み合わせて病態のメカニズムの解明に取り組み、この病因蛋白質を蛋白質あるいはRNAのレベルで発現量を低下させて核内の蓄積を減少させたり、病態関連遺伝子を探索して神経機能を維持する治療法の開発に取り組んでいます。これらのメカニズムのうち、オートファジーはまだ不明な点が多く、新規オートファジー調整薬のスクリーニングを行ってオートファジーの分子機構に関わる化合物の分子作用機序を明らかにし、新しい治療法につなげられないか検討しています。疾患のモデルは、トランスジェニックマウスや培養細胞モデルなどを用い、臨床応用を目指す研究を行って参ります。
<研究手法の例>
- 細胞モデル:SH-SY5Y、Neuro2a、NSC34のTet-On 3G細胞株を作成し、神経変性疾患変異遺伝子ベクターを導入して誘導細胞モデルを構築。
- 初代神経細胞に変異遺伝子ベクターウイルスを感染させ疾患細胞モデルを作成。
- mCherry-EGFP-LC3 オートファジーレポターベクターを導入して安定細胞株を作成。
- 蛍光染色、レポターアッセイ、免疫電顕、マイクロアレイなどで病態解析をおこなう。
- 化合物のスクリーニングを行う。
- 疾患モデルマウスにて効果を検証する。