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神経免疫グループ

①多発性硬化症の病態に関する研究

 多発性硬化症(MS)は中枢神経系の脱髄を特徴とする自己免疫炎症性疾患であり、臨床症状としては視神経炎、運動麻痺、感覚障害、運動失調などの中枢神神経系の障害が急性に発症し、その後も再発寛解を繰り返す疾患です。原因についてはミエリン蛋白に対する自己免疫応答の重要性が考えられていますが、十分解明されていないのが現状です。現在、再発の予防目的にinterferon-bやfingolimodが使用され一定の効果を示していますが、効果不十分な症例があり、より選択的で効果的な治療法が望まれているのが現状です。さらにMSでは発症から数年から10数年で、進行性の神経障害を呈する二次性進行型MSへの移行が知られており、炎症性脱髄のみでなく神経変性機序による中枢神経系の障害の重要性が示唆されています。こうしたことと関連してMSでは認知機能障害や脳萎縮が早期から出現し、緩徐に進行する場合があることが報告されており、我々も発症早期のMS患者の一部で既に高次脳機能障害が出現していることを確認しています。この背景病理としては炎症とともに神経変性機序が早期から出現し維持されることが推測され、MSにおける炎症性神経変性の機序の解析を行っています。

 

②視神経脊髄炎の病態に関する研究

 視神経脊髄炎(NMO)は視神経炎と急性横断性脊髄炎を特徴とし、その多くが再発性であり、抗aquaporin-4(AQP4)抗体が病態に強く関与している自己免疫性神経疾患です。病理学的にはAQP4を強く発現しているアストロサイトが強く障害されることからアストロサイトパチーとして位置づけられており、AQP4抗体は重要な診断マーカーとなっています。再発予防としては、MSと異なり副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤が一般に使用されています。一方、MSで使用されるinterferon-bやfingolimodは禁忌とされており、これは免疫学的背景がNMOとMSで大きく異なるからです。NMOではMSと比較して、血清やCSFで液性免疫に関与する因子が増加しており、サイトカインやケモカインのレベルも発現パターンも異なります。現在、NMOの病態におけるサイトカイン及びケモカインの関与について解析しています。

  

③神経疾患におけるアストロサイトの機能の解析

 アストロサイトは中枢神経系で重要な機能を担う主要なグリア細胞です。近年、免疫応答にも関与することが明らかにされており、NMOの標的となっている以外にもMSでも炎症や脱髄、神経変性に関連して重要な役割を果たしていると考えられています。アストロサイトの培養細胞や初代培養細胞を用いて、アストロサイトの様々な神経疾患の病態への関与について解析しています。