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ストレスのメカニズムについて

心因性発熱

心因性発熱は代表的な心身症の一つであり、原因不明の微熱患者の48%、我が国の心身症専門外来の2-5%を占めるといわれています。しかしながら、ヒトの心因性発熱の機序はいまだ不明であり、治療法も確立していません。

心因性発熱に関する研究がすすまない理由の一つに、ヒトの心因性発熱に近い、適切な動物モデルが存在しない点があげられます。もしヒトの心因性発熱に近い動物モデルを作成することができ、感染、炎症時に生じる発熱機序と比較すれば、心因性発熱の機序、感染/炎症による発熱反応との相違を明らかにすることができます。

ヒトの心因性発熱はいくつかのサブタイプに分けられます。一つは手術前、歯科医受診前など、急性ストレス状況で一過性に体温上昇をきたすが、24時間以内にベースラインに戻るタイプ(急性型心因性発熱)であり、もう一つは慢性ストレス状況が続く中で、数ヶ月以上も微熱が持続し、ストレスから解放された後も、なかなか平熱化しないタイプ(慢性型心因性発熱)です。

 ヒトの急性型心因性発熱に相当する現象は、実験動物ではstress-induced hyperthermia (SIH)としてよく知られています。しかしながら、成人に多くみられる慢性型心因性発熱に相当する動物モデル存在しませんでした。そこで我々は慢性ストレス状況で慢性微熱を生じる動物モデルの作成を試み、4週間、繰り返し社会的敗北ストレスを負荷することで、非ストレス時でも明期、暗期ともにコントロールより高体温を呈するラットモデルを作成することに成功しました。現在この研究をもとに、慢性ストレス性高体温反応に対する治療方法の研究を行っています。